襲名公演

海老蔵襲名前後のドキュメントをNHKでやっていて、久しぶりに歌舞伎を見た。実は9年前、歌舞伎にはまった。なぜか。その時好きだった人が歌舞伎好きだったとか、橋本治の『江戸にフランス革命を!』(ASIN:4791750470)を読んだからだとか、まあいくつか理由はあるにせよ、やはり安価に何時間も江戸の時空間に浸りきれるあの空間がやめられなかったというべきだろう。もちろん銀座の歌舞伎座である。幕見席というのがあって、半日見てても学割で2千円ちょっと。しかも天井桟敷のこの場所は、プロ(?)の観客が来るので、緊張感あるんだな。場の空気をよりつかみやすいのだ。花道なんてちょっとしか見えないけど、花道に出た瞬間にかけ声かけるわけよ。そのへんのタイミングなぞ、すごいな、といつも感動もので。
当時は、6代目歌右衛門の舞台がほとんど最後だったが見ることができ、あの広い空間が一瞬でピンとはりつめるあの感覚は一生忘れないだろう。尾上梅幸の舞台は、ついに見ることができず、病気休演のまま亡くなってしまった。そんな松竹100年の1995年だった。阪神大震災がおき、地下鉄サリン事件がおき、戦後50年の節目をむかえたこの年。私の20代は決定づけられたのである。
私のひいきは、京屋、中村雀右衛門なんだが、團十郎菊五郎などまだまだだな、などと、まあ生意気に観劇してたと(笑) で、夏には、普段は昼の部と夜の部の2部構成なのが3部構成となり、1部あたりの料金が安くなり、若手が出るんだが、これが全く別ものであって、あの江戸が全然ない悲しい舞台であったりするのである。なので、團十郎菊五郎の子どもも、あと何十年かしてから見ればいいかな、という感じで思ってた。
で、團十郎の息子、新之助海老蔵を襲名するといっても、さほど興味はわかなったのだが、まあやはり部分部分ではかなりよくなっているのに、久々に見て驚き、歌舞伎座通いのあの頃が急に懐かしくなり、すごく見に行きたくなってしまった。とはいえ、團十郎雀右衛門も病気で、ああ、だんだん世代交代か。しかも、気軽に見られるあの幕見席はなんと銀座の歌舞伎座しかなく、京都も大阪もないのだ。こういうちょっとしたところに、すごく差があるのが地方の残念なところだ。
ってなことで、今日はこれぎり〜っ。